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慣用句から見る中日の「鬼」

2018-11-10杨雪

世界家苑 2018年10期
关键词:人間精魂辞典

一、はじめに

「鬼」という言葉を聞いたら、中国人にとって、幽霊や怪物などを想像し、厳しく恐い感じをくれる。それに対し、日本人の友達に言うと、皆「お化け」、「このような形をしている」と言いながら、恐くなさそうに鬼の様子を描いている。「鬼」という言葉は中国で意味する単なる邪悪な存在と違い、善にもなりうるということは筆者をびっくりさせた。とうてい日本文化における「鬼」はどんなイメージを日本人に与えるか。中国の「鬼」文化との相違点は何であろうか。本稿では日本文化の学習において、言語の立場から、ひいては中日の慣用句を中心にして両国の「鬼」の相異点の研究を試みたと思う。

二、日本語の「鬼」

『広辞苑』(新村出、岩波書店、1998)を引いて、以下のように「鬼」の意味が解説してある。

1天つ神に対して、地上などの悪神、邪神。

2伝説上の山男、巨人や異種族の者。

3死者の霊魂、亡霊。

4恐ろしい形をして人にたたりをすする怪物。

5想像上の怪物。

仏教の影響で、餓鬼、地獄の青鬼·赤鬼があり、美男子·美女に化け、音楽·双六·詩歌などに優れたものとして人間世界に現れる。後に陰陽道の影響で、人身に、牛の角や虎の歯を持ち、裸で虎ののふんどしをしめた形を取る。怪力で性質は荒い。

6鬼のような人

ア非常に勇猛な人。

イ無慈悲な人。借金取り。債鬼。

ウある事に精魂を傾ける人。「仕事の鬼」。

エ鬼ごっこなどで、人をつかまえる役。

7貴人の飲食物の毒見役。おにやく。

8紋所の名。鬼の形をかたどる。めんおに。かたおに。

9名詞に冠して、勇猛·無慈悲·異形·巨大の意を表す語。

以上の説明から日本の「鬼」の意義を大まかにまとめてみると、1―5は想像上や伝説などの具体的現象である。5項から、日本人がどうしてその固定的な印象に根ざしたかという問題が分かる。6は人間の性格や精神的面に関する意義で、比喩的な意味を持っている。7は一種の役である。8芸術での専門語で、9は接頭語として使われる。

『広辞苑』と『新日漢成語諺語辞典』に載せた黒い字体で印刷された重要な慣用句だけでも21個ある。大部分の慣用句は事物や人生の道理を説明するために、鬼の本義を借用し、隠喩の手法で作成されるものである。筆者は次のように分類しておく。

1.学芸·技能·知識を表す

(1)鬼の金棒: 如虎添翼

2.情·人間関係·礼儀·縁

(2)鬼の目にも涙 恻隐之心,人皆有之

(3)鬼も十八、番茶も出花 女大十八变

(4)鬼が仏に早変わり 菩萨面夜叉心

(5)鬼にもなれば、仏にもなる 有礼笑脸迎,无礼冷眼看

(6)鬼の空念仏 魔鬼念佛假慈悲

(7)鬼瓦にも化粧 佛要金装,人要衣装

(8)鬼も居ぬ間に洗濯 阎王不在家,小鬼乐开花

(9)鬼が住むか蛇が住むか 人心莫测

3.行動

(10)鬼を酢にして食う 无所畏惧

(11)心を鬼にする 下狠心

(12)鬼が笑う 笑可笑之事

(13)鬼の餌食を餓鬼が取る 莫道君行早,更有早行人

(14)鬼の棒にも当たってみよ 虽难当再试,会有成功时

(15)鬼の首を取ったよう 欣喜若狂,如建奇功

4.人生の浮沈·運·不運

(16)鬼が出るか仏が出るか 前途未卜

(17)鬼の霍乱 壮汉也有病倒时

(18)鬼に千振醜女に唐子 愁眉苦脸

5.自己省察·素養

(19)鬼も角折る 浪子回頭金不换

(20)鬼の閉てたる石の戸も情にあく 纵使恶鬼关石门,精诚所至亦能开

(21)鬼の目にも見残し 智者千虑,必有一失

以上の「鬼」につく慣用句は、社会や人生や素養などの面に触れ、ユーモアさが溢れる言葉である。気がついたのは、その慣用句の中身である。人性の悪に反省すること、社会の不正に反対する意見、運命の不幸に風刺するなどはまるで針のように鋭い。「鬼」という姿は単に人身に、牛の角や虎の歯を持ち、裸で虎の皮のふんどしをしめた形を取るものではないが、面白くて、親しみの感じも持っている。特に、面倒くさいことにあった時、或いはおかしい場面においたら、「鬼」についての慣用句を語って人間関係が円滑し、和やかな雰囲気になりやすいと思う。だから、日本人が平然に「鬼」ということは当たり前のことではないであろうか。

三、中国語の「鬼」

現代中国語の「鬼」の意味は大きな変化している。『新日漢成語諺語辞典』に載せた9項の意味はこのように書いている。

1霊魂、お化け。

2人を軽蔑かないやつ。

3こそこそしている、後ろ暗い、何かたくらみがある。

4陰険な、腹黒い。

5ひどい、劣悪な、嫌悪感を持つ。

6機転が効く。

7ごまかし、秘密、いんちき。

8二十八宿の一つ。

9完全な否定を表す。(方言)

以上から分かるように、1は伝説上などの言い方である。2と5は人にからかう言葉で、347は陰険なことを表す。6は頭がよく、臨機応変を心得ている人を形容する。9は方言で、あまりよく使われる言葉とは言わない。『例解中国語慣用句辞典』に出てくる「鬼」で用いられる慣用句は文脈から理解し、意味をどの面に重点を置くかは様々である。

1.幽霊、お化け

(1)鬼门关:地獄の入り口、恐ろしい場所のたとえ。

(2)鬼晓得:幽霊しか知らない。理解し難しい、見分けにくいたとえ。

2.人に軽蔑し、事物にいやな感じをもつ

(3)鬼呲牙:鬼が歯を見せる。非常に寒い形容。

(4)鬼门关:過ごしにくい時間のたとえ。

3.人の後ろに暗い、何か企みがある様子

(5)鬼八卦:悪知恵·悪巧み

(6)鬼把戏:ア人を騙すからくり、いんちき。

イ陰険な手段または詭計のたとえ。

(7)鬼吹灯:陰で、破壊活動を行う。陰で悪知恵を働かすたとえ。

(8)鬼迷心窍:悪魔が心の中に入り込む。ふと悪い考えを起こすたとえ

(9)鬼名堂:よくない企て、からくり、卑劣な手口。

(10)鬼算盘:ずるい打算のたとえ。

4.機転が効く

(11)鬼点子:とっぴな知恵、機転を利いた考えのたとえ。

(12)鬼过场:臨機応変なやり方、詭計。

5.方言、完全な否定を表す

(13)鬼晓得:誰も知らない。

従って、中国人が理解している「鬼」は主に「秘密に、陰険な」、「嫌悪感」などのマイナス的な意味が多い。ただ、4項はプラス的な意味を含め、他の語と組み合わせると「調皮鬼·機霊鬼」のような言葉は可愛がっているように気がする。それに、中国語の「鬼」は人の行為を心理活動に隠喩し、ずるく、陰険なイメージをくれる。

四、「鬼が恐い」と「可愛い鬼」

日本の「鬼」は主に無慈悲で、勇猛な人を比喩する。中国の「鬼」は秘密に、陰険な事物を形容する。「鬼の目にも涙」という慣用句があるが、これは鬼のような残酷で無慈悲なものでも、時には悲しみのために、涙を浮かべると言う。もし、中国語に翻訳すれば「铁石心肠也流泪」である。「鬼」と「石」の違いははっきり見えるが、両者に反映する二つの考え方は中日文化にとって大切だと考える。

慣用句から見る日本の「鬼」は自然の一員として、喜怒哀楽をもって、技能も備える。

それに、日本に伝来した鬼は民間伝承や昔話の中で、単に邪悪な存在だけではなく、苦しんだ村人を助けたり、病気や禍いを防ぎ、秋田県のナマバゲのように邪霊を追い払い、人を大丈夫にしてくれたりする福の神のような存在になり、多彩鬼のイメージが生まれた。そして、日本文化には、「鬼」が人にからかうという意味合いは薄いが、あることに精魂を傾け、精力を集中するのは強調する。日本の「鬼」は自然との切れる切れない関係がある。日本人の自然観は山川、草木、人と神と組み合わせる世界で、「万物は魂がある」のような世界である。だから、いつも力及ぶ所限り自然に優しく保護し、自然との和やかな雰囲気を守るために頑張っている。「鬼」にさえも親しみが感じられるようである。

中国の「鬼」は人間の悪習と弱さを映るために想像するもので、大部分の使い方はマイナス的な色に染められる。例えば、前に分析したのは、中国語の意味の2·3·5は日本語の6のイと同じ色彩で、つまり、軽蔑的に無情に陰険な性格や態度を表す。中国は古代から政治生活を重んじ、「鬼」はほとんど不運や邪気を避けるために使われる。皆知っているように、大晦日、玄関に門の神(钟馗)の姿が貼ってある風俗がある。それは鬼を追い払いて、来年の幸運を祈る意味を象徴する。慣用句に現る「鬼」の意味は、このような傾向を持っている。それゆえ、中國の鬼は神秘的に、怖がっている感じを中国人にもたらす。

五、終わりに

中国は日本とともに、「鬼」という概念を持っている。同じ漢字を使っているが、「鬼」に対するイメージは大変異なる。本稿は、両国の慣用句から「鬼」に含む感情と生まれる原因を分析してきた。日本の「鬼」と中国の「鬼」に遡るが、同一の字源から生まれる。(『説文·鬼部』「鬼,人所归为鬼。从人,像鬼头。鬼阴气贼害」)また、霊魂·幽霊を表す。しかし、文化変遷に従って、中国語の「鬼」は心理現象の方に変わってきた。日本語の「鬼」は、世間の様々な面に滲み込んで、ユーモア的な言葉で浮世の暗黒を風刺する機能がある。

また、両方の関係にいてであるが、中国の「鬼」は機敏な、臨機応変なやり方という意味合いがあるのに対し、日本の「鬼」は精魂を傾け、精力を集中するものである。これは、異曲同工の微妙ではないか。

中日の「鬼」についての対照はまだたくさんのところを研究しようと思う。これから、「鬼」にまつわる神話、童話についての考察を試みたい。

参考文献

[1]『広辞苑』 岩波書店 新村出編集 1998年

[2]『日本諺物語』 雄山閣 針原孝之 1995年

[3]『新日漢成語諺語辞典』 上海訳林出版社 王永生 2002年

[4]『現代漢日辞海』 北京大学出版社 大東文化大学 1993年

作者简介

杨雪(1983.10—),女,汉族,吉林长春人,讲师,硕士,主要从事日语语言文学研究

(作者单位:大连交通大学外国语学院日语系)

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